2023年 夏の電子顕微鏡フォーラム 講演要旨

2023年 夏の電子顕微鏡フォーラムのアブストは以下の通りです。

■チュートリアル講演■

金属における格子欠陥の挙動のTEMその場観察

荒河 一渡(島根大学 次世代たたら協創センター

結晶格子欠陥(点欠陥、点欠陥集合体、転位 等)は、様々な極限環境(核融合炉等の高エネルギー粒子照射環境、水素貯蔵材料等の高圧水素環境、航空機ジェットエンジン等の高温環境 等)における金属構造材料の力学挙動をしばしば支配する極めて重要な因子である。我々は、主に超高圧電子顕微鏡およびイオン加速器結合型電子顕微鏡を用いた TEM その場観察法を駆使して、極限環境下における欠陥挙動に関する基礎的な知見を得てきた。本チュートリアルでは、これらの欠陥挙動を TEM で捉える方法について触れるとともに、我々の最近の成果のいくつかについてご紹介したい。

SEMを用いたEBSDの基礎と応用例

森田 博文(オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社)

走査電子顕微鏡(SEM)を用いた後方散乱電子回折(EBSD)はすでに多くのユーザーで使われており、材料の結晶方位マップをはじめとして粒径分布、極点図、逆極点図、ODFなどの分析結果が得られています。最近ではひずみ解析や転位解析などへの応用が期待されて、対応したアプリケーションも開発されてきています。さらに20年以上にわたって主流であったHough変換を使った指数付けのアルゴリズムに加えて、菊池パターンをパターンマッチングの技術で指数付けを行う手法も加わってきました。今回はEBSDの基礎から応用までの広い範囲で紹介します。

■トピックス講演■

全固体リチウム電池の結晶配向性とイオン伝導

野村 優貴(一般財団法人ファインセラミックスセンター)

Liイオン電池のニッケル系正極は、高容量と低コストを両立しており、有望な材料系である。しかしながら、充放電反応におけるLiイオンの脱挿入による不均一な体積変化により、粒界に亀裂が生じることが課題である。性能向上のためには、結晶配向性・Li伝導経路・相転移などの物理現象の詳細を理解し、劣化反応を抑制する必要がある。本研究では、透過電子顕微鏡を用いて充放電中のLiイオンの動きをその場観察し、これらの要素間の相関を調べた。講演では、Liイオンは結晶内のLiを含むa-b面を結ぶ曲がりくねった経路を通って伝導することなど、複雑な正極材料における電気化学反応過程を議論する。

転位の見方・測り方・使い方

光原 昌寿(九州大学 大学院総合理工学研究院)

往々にして、材料中に内在する転位はその材料物性の発現に関与する。例えば、変形させた金属材料に存在する転位の分布・性格・密度、それら転位の運動により作り出される構造等を正しく捉えて定量的に評価することは、その材料の機械的性質が発現するメカニズムを考察する上で極めて有用である。本発表では、金属材料中の転位組織と特性発現機構を関連付けたいくつかの研究例を紹介する。その中で、転位を観る方法、測る方法、そして、それらのデータを利用する方法について説明する。

電子顕微鏡を用いた結晶方位解析と機械的性質評価法の紹介

諸永 拓(物質・材料研究機構 技術開発・共用部門 電子顕微鏡ユニット)

物性には機械的,熱的,電気的などの様々な物理的性質が存在するが,中でも,材料の機械的性質は転位論に基づいて議論される.転位論について書かれた教科書,本では最初に結晶学の概要を説明するものがほとんどであり,このことは機械的性質の評価・理解には結晶を知ること,つまり結晶解析が必要不可欠であることを示している.本講演では結晶解析として「透過型電子顕微鏡を用いた結晶方位解析」と,機械的性質の評価法として「その場観察における力学試験」の事例を紹介する.

SEM-ECCI法を用いた鉄鋼材料中の転位観察技術

森 孝茂(日本製鉄)

鉄鋼材料の力学特性の更なる向上のためには、塑性変形を担う転位の観察/解析が必要不可欠である。転位を可視化する手法として、近年、SEMの反射電子観察法であり、結晶方位に敏感な電子チャネリングコントラストイメージング(ECCI)法が注目され、材料中の転位や積層欠陥等の格子欠陥の観察に適用されつつある。この手法は、従来、転位観察に広く用いられるTEMによる薄膜観察法と比較して、バルクサンプルを観察できる利点がある。本発表では、SEM-ECCI法及びTEMにより観察された鋼中の転位コントラストを直接比較した結果や、SEM-ECCI法による転位観察事例を紹介する。


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