第11回電子顕微鏡解析技術フォーラム議事録

1. 日時: 1996年8月30日(金)~31日(土)

2. 場所: 松湖荘(滋賀県草津)

3. 参加者: 50名

4. 配布資料: 1) 第11回電子顕微鏡解析技術フォーラム講演要旨集

5. 第11回電顕解析フォーラムの特徴

「電子顕微鏡像をより容易に正しく解釈するために」をテーマをもとに、先端材料の解析で重要となる半導体や金属の格子欠陥の評価解析方法についての講演が行われた。一般公募した解析事例では6件の発表があり、半導体試料作りと電子顕微鏡像の解釈についての議論が行われた。また、先端材料解析のためのインターネットの活用や画像転送技術などのトピックスについて報告が行われた。このフォーラムの特徴の一つである「ざくばらんトーク」では、参加者が日頃抱えている問題点について、深夜まで活発な討議がなされた。今回は、松下テクノリサーチのご好意により、松下電器の保養施設を利用することができ、会場および宿泊施設についても大好評であった。

6. スケジュール: 別紙参照(このページには記載していません)

7. 講演内容:

金属中の格子欠陥  馬越佑吉(大阪大学 工学部)

点欠陥の種類には単純な原子空孔によるショットキー型欠陥、原子空孔と格子間原子との対によるフレンケル型欠陥があり、これらの形成について解説が行われた。転位については、刃状転位とラセン転位の定義、転位の移動や分解についての基礎的な講義が行われた。さらに、化合物など、原子の配列が変わってしまう面欠陥についても説明がなされた。

格子欠陥の電子顕微鏡像  森博太郎(大阪大学 超高圧電子顕微鏡センター)

格子欠陥の電子顕微鏡像を解釈するために基礎的な概念として、電子顕微鏡におけるコントラストの成因や菊地線についての講義が行われた。また、ダイヤモンド中の欠陥について解析では、この解析では等厚干渉縞を用いて試料膜厚と観察観察された欠陥数から欠陥密度を求めた例が紹介された。

粒界、界面の電子顕微鏡像  角田直人(大阪大学 工学部)

ForwoodとClarebrougghのテキスト「Electron Microscopy of Interfaces in Metals and Alloys」を用いて、粒界の解析手法の講義が行われた。また、現在、超高圧電顕(3000kV)で行っている研究から、シリコン基板上のアルミ配線におけるエレクトロマイグレーションのその場観察について報告がなされた。

半導体プロセスと格子欠陥  井上直久(大阪府立大学 先端科学研究所)

シリコン結晶のgrown in欠陥や点欠陥の解析、化合物半導体のにおけるプロセス欠陥解析、半導体のモビリティーと歪との関係についての解析、光デバイス等の欠陥解析評価についての解説が行われた。

TEMにおける撮影のポイント  鈴木三喜男(日本電子)

サイドエントリー試料ステージの問題点、軸合わせ上の注意、高分解能観察手法の実際、EDS分析のノウハウなどについて、キーポイントの解説が行われた。

SEMにおける撮影のポイント  多持隆一郎(日立計測エンジニアリング)

アーティファクトや像障害を含まず、十分なコントラストとシャープさをもつ美しい電子顕微鏡像観察のためのノウハウについて説明され、特に、チャージアップ現象や試料損傷の軽減策について解説が行われた。

TEM試料作製時間の短縮化の検討  為我井晴子(日本電気)

イオンミリングによるSiの試料作製において、機械研磨における最終膜厚を光の干渉色によって決定するノウハウが紹介された。

ミクロトームによる切片作製法の探究  原敬(リコー)

相変化型光ディスクは高分子基板上に無機薄膜の積層膜が堆積されており、この積層構造を観察するために試料作製技術のノウハウについての紹介が行われた。

 EPMAの相分析への応用  中村久和(住ベテクノリサーチ)

熱硬化性樹脂を用いた複合材料に対して元素マッピングから元素組成比を解析し、相分離マップを行った事例についての紹介

電解MnO2の透過電子顕微鏡観察  半澤規子(三井金属)

電解MnO2の結晶構造をX線回折およびTEM観察で行った結果についての中間報告。結晶構造は、従来から議論されてきたRamsdelliteではくNsuiteのであることがわかった。

Ni基合金の水素脆化破壊機構と転位挙動に及ぼす規則化の影響  宮田佳織(住友金属)

Ni-Cr合金やNo-Cr-Mo合金の水素脆化破壊機構を、割れ界面のSEM観察たやモデル合金を用いた結晶学的な解析で、すべり面と割れの方位関係や転位のプラナー化についての結果が報告された。

球状黒鉛鋳鉄の黒鉛微視構造のキャラクタリゼーション  五十嵐芳夫(日立金属)

Fe-Si-Mgの球状黒鉛鋳鉄の球状組織の生成過程に関するキャラクタリゼーションの結果の中間報告で、中心部のMgS粒子をとりまき成長する黒鉛組織の解析結果が報告された。

インターネット活用事例とホームページ紹介  中野明彦(シャープ)

インターネット上からの情報収集の基礎的な概論とネットワークを用いた電子顕微鏡像の転送などの利用方法についての解説が行われた。

インターネット上のホームページの活用  平坂雅男(帝人)

電子顕微鏡関連のインターネット上のホームページの紹介と先端材料研究部会が計画しているインターネットを用いた情報交換などについて説明が行われた。

文責:平坂雅男(帝人)