第12回電子顕微鏡解析技術フォーラム議事録

1. 日時: 1997年3月22日(土)

2. 場所: 日本電気(株)玉川クラブ(向河原)

3. 参加者: 67名

4. 配布資料: 1) 第12回電子顕微鏡解析技術フォーラム講演要旨集

5. 第12回電顕解析技術フォーラムの特徴
 「半導体デバイス評価における電子顕微鏡の可能性」をテーマに、LSI関連の評価解析を中心とした講演が行われた。今回は、特に電子顕微鏡を用いた解析にあたり、LSI技術の最新動向や評価技術への期待を含めた基調講演が行われた。また、参加者からの質問に対して解決のための議論を行なう「Q&Aコーナー」では、ガラス基板上の導電性の無い試料の観察方法、界面の微小領域の像解釈などについて議論が行われた。

6. 基調講演内容

歩留まり向上技術の動向と分析技術の重要性  辻出 徹(日本電気 分析評価センター)
 LSI開発において問題となる工程中のパーティクル分析についての重要性と、そのインラインモニターについての報告がなされた。また、不良原因を解析するために開発したOBIRCHシステムやエキスパートシステムを用いた不良原因推定システムなどが紹介された。

ULSI技術と評価 安田 幸夫(名古屋大学 工学部)
 デバイスの寸法微細化と共に問題となるシリコン中の不純物ゆらぎ、ゲート絶縁膜の開発、ソースおよびドレイン領域の浅接合化について解説が行われた。また、今後のプロセス開発ではナノサイズの評価技術が必要であり、 (a)界面・表面付近の原子構造や欠陥の位置の評価 (b)歪量の評価 (c)表面・界面の3次元形状評価 (d)不純物の3次元的な分布評価 等への要望が述べられた。

7. 一般講演内容

SiーLSIの平面TEM試料作製技術 安尾 文利(シャープ 超LSI開発研究所)
 LSIの断面TEM観察の試料作製には多くの場合FIBが用いられているが、平面観察においてはGaイオンによる損傷等が問題となる。そこで、FIBによるマーキングとイオンミリングを用いた試料作製技術と、その技術用いた平面TEM観察事例が報告された。

MOSFETの厚膜断面試料観察  朝山 匡一郎(日立製作所 半導体事業部)
 デバイスの不良解析において、不良ビット全体の観察には膜厚が1μm程度の試料を観察する必要がある。超高圧電子顕微鏡(2MV)を用いた厚膜観察例が紹介された。また、γ型のエネルギーフィルターを装備した100kVの電子顕微鏡では、比較的に厚い試料をコントラスト良くシャープに観察できることが報告された。

InGaAsPレーザーの劣化解析 松田 竹善(古河電工 横浜研究所)
 InGaAsP/InP系デバイスの劣化モードの解析について報告が行われた。急速劣化したBH(Buried Heterostructure)レーザ、および、ゆっくり劣化したBHレーザの転位の分析結果が報告され。CAT法で撮影した積層構造についても議論が行われた。

金属表面上のチタン酸ストロンチウム薄膜のドメイン組織の解析  竹野 史郎(東芝 研究開発センター)
 半導体の高集積化に伴う高誘電体膜の研究が行われている。金属電極とperovskite薄膜の組み合わせとして、単結晶Ptに成膜したSrTiO3膜の構造解析について報告がなされた。特に、モザイク状に成長した組織では、各結晶粒の方位関係に特徴的な関係があることがわかった。また、各ドメインとPt(001)界面におけるNCSL(Near Coincidence Site Lattice)の解析も報告された。

CBED法を用いた格子歪み解析法の検討  酒井 哲哉(日本電気 ULSIデバイス開発研究所)
 デバイスの高集積化に伴う微細化、立体化等により、デバイス中に生じる局所的な応力の解析が必要となってきている。X線回折およびラマン分光法では行なえない局所の応力解析を行なう方法としてCBED法を用いた解析について報告が行われた。この手法ではサブミクロンオーダー以下の空間分解能で解析が可能である。

超硬質材料の開発と電顕観察  堀内 繁雄(無機材質研究所)
 ダイヤモンドに次ぐ超硬質材料である立方晶窒化ほう素(c-BN)は、六方晶BN(h-BN)から合成することができる。この過程での結晶構造の変化について観察した結果、積層欠陥が多いとc-BNの生成が多くなることがわかった。そこで、粉砕ミルを用いて意図的にh-BNに欠陥を入れると、c-BNの生成が促進されることがわかった。

インターネット交流ワーキンググループ報告  平坂 雅男(帝人 構造解析センター)
 先端材料解析研究部会で検討しているインターネットを利用した研究者の情報交流についての報告が行われ、4月以降の計画についてのアナウンスがあった。また、インターネット上で利用できる電子顕微鏡関連のシミュレーションについて紹介が行われた。

< 先端材料解析研究部会責任者:永田文男(日立計測)
実行委員長:為我井晴子(日本電気)
実行委員:小林恵美子(日本フィリップス)、高島正樹(三菱化学)、竹野史郎(東芝)、原敬(リコー)、半澤規子(三井金属)、平坂雅男(帝人)、松本千佳(日本電気)

文責:平坂雅男(帝人)