【予稿集】は こちら

2026年 新春電子顕微鏡解析技術フォーラム 予稿集を掲載します。
※敬称略

『チュートリアル』

・環境・エネルギー材料その場電子顕微鏡解析

竹口 雅樹(物質・材料研究機構)

カーボンニュートラル実現に重要な科学技術分野の一つとして電池や触媒などの環境・エネルギー材料の研究開発が活況であり、高性能化や劣化のメカニズム解明には動作時におけるダイナミクスの原子レベル解析が必要である。その場観察電子顕微鏡はその有用なツールとして注目を集めている。またMEMS技術により様々なその場観察チップが開発されており、上記のようなその場観察ニーズと相まって広く普及するようになってきている。本チュートリアル講演では環境・エネルギー材料その場電子顕微鏡解析のいくつかの代表的な技術と応用例を紹介する。

『トピックス』

・走査電子誘電率顕微鏡を用いた液中環境下での高コントラスト・非侵襲的その場観察

内山 博允(東レリサーチセンター)

走査電子誘電率顕微鏡(SE-ADM)は、走査電子顕微鏡をベースに、電子線を試料に直接照射せず、誘電率の違いによる電位変化を検出することで、液中試料を高コントラストかつ低ダメージで観察可能な技術である。この手法により、試料を液中環境に保持したまま、物理的・化学的処理を施すことなく構造や状態を直接観察する「その場観察」が実現される。SE-ADMでは、非染色・非侵襲的な条件下で、生体分子や細胞構造、ナノ粒子などを自然な状態のまま可視化できる。本講演では、アルギン酸などの高分子凝集体など、これまでの観察事例と今後の展望について紹介する。

・In-situ 加熱 TEM 観察の材料解析への応用 

中村 和人(東ソー分析センター) 

実プロセス中の挙動をナノメートルオーダーで可視化し、機能発現機構の解明につなげることができるIn-situ観察技術は、材料開発において重要技術の一つである。当社では、セラミックスや半導体材料の焼結、熱処理、成膜など数百度以上の高温が必要なプロセスの解析を行っており、これらの解析にIn-situ加熱TEMを適用した。加熱観察時の挙動に対して、FIBによる試料作製時のリデポジションや試料形状が大きく影響することが分かり、観察目的に合わせた試料作製を試みた。本発表では各種材料の700℃~1,300℃でのIn-situ加熱TEM観察を実施した結果を報告する。

・クライオ電顕技術を用いた材料系試料のその場観察

稲葉 健介(日産アーク)

工業材料の分野では、基材に原材料である液状物を塗布し、乾燥させることで、機能性膜(例えば、電池電極膜、塗装膜、化粧膜など)を成膜させる湿式プロセスが多く用いられている。機能性膜の膜構造を制御するためには、原材料である液状物の内部構造を把握することが重要となる。そのため、試料を急速凍結し、適切な前処理を行うことで液状試料であっても形状を保ったまま観察や分析が可能であるクライオ電顕技術が注目されている。本講演では、クライオ電顕技術を用いて材料系試料のその場観察を行った事例を紹介する。

・低電子線耐性材料のその場損傷解析

吉田 要(JFCC)

電子顕微鏡観察・計測において試料の電子線損傷は不可避な課題である。特にスナップショットでなく何らかの変化を観測したいとするその場観察などの際には、電子線の影響について十分に把握しておくことが必要である。電子線への耐性は試料のタイプに応じて大きく異なっている他、得ようとする情報に応じて許容される電子線量も大きく異なる。そこで本報告では、主に高分解能TEM観察による低電子線耐性材料の電子線照射損傷過程解析の事例について紹介する。


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