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2025年 夏の電子顕微鏡解析技術フォーラム 予稿集を掲載します。
※敬称略

『チュートリアル』

・高加速STEM/SEMによるガス導入加熱時のその場観察

松本 弘昭(日立ハイテク)

その場観察は、試料の実動作環境に近い雰囲気下で微細構造変化を高分解能でリアルタイムに観察できるため、ナノ材料の開発において重要な役割を担っています。ガス導入機構を備えた収差補正200 kV STEM/SEM (日立ハイテク製 HF5000)を開発し、試料の表面形態と内部構造を原子分解能で同時にその場観察する技術を確立し、触媒の酸化還元メカニズム解析などに応用してきました。本講演では、その場観察技術の概要と様々なガス環境や圧力、高温条件に対応する各種試料ホルダーを用いた、広く環境関連材料を中心とした解析事例をご紹介します。

『トピックス』

・走査/透過電子顕微鏡を用いた全個体電池反応のオペランド観察

山本 和生(JFCC)

全固体電池は、次世代蓄電池の一つとして日本を中心に長年研究され、今や、車載用の電池として実用間近の段階にある。JFCCでは、2000年代後半より全固体電池に注目し、透過電子顕微鏡内で充放電させる技術を開発するとともに、Li分布や電位分布のオペランド観察を行ってきた。本講演では、基本的な電圧印加技術から、STEM-EELSやElectron Holography、機械学習を併用した最新の応用観察までを紹介する。

・放射光を利用した蓄電池合剤電極内の充放電反応の3次元オペランド化学イメージング 

木村 勇太(東北大学)

近年の放射光計測技術の発展により、デバイス/材料内部の微細構造に加え、その内部で生じる材料の化学的な変化を、リアルタイムで3次元的に可視化することが可能となっている。我々は、コンピュータ断層撮影法とX線吸収端近傍構造法を組み合わせた分光イメージング技術である、CT-XANES法を活用して、蓄電池合剤電極内の微細構造およびその内部の充放電反応の空間分布を、3次元かつオペランドで可視化する手法を開発してきた。本講演では、CT-XANES法を用いた3次元化学イメージングの概要を紹介するとともに、これを用いた我々の最近の研究成果について報告する。

・オペランドTEMによるリチウムイオン電池正極材料の相変化観察

大島 義文(北陸先端科学技術大学院大学)

リチウムイオン電池の高速充電時に生じる正極および負極材料の構造的・組成的変化を理解することは、電池性能と信頼性の向上に向けた重要な課題です。しかし、これらの変化は多くの場合非平衡な相変化として進行するため、理論計算による解析や予測が困難です。オペランド透過型電子顕微鏡法は、充放電中にリアルタイムで材料内部の構造変化を直接追跡できる、有効なアプローチです。本講演では、LiMn₂O₄ナノワイヤを正極、液体イオン電解質、Li₄Ti₅O₁₂を負極とするナノバッテリーを構築し、そのオペランドTEM観察を実施した結果について報告します。観察の結果、充放電プロセス中に正極材料で生じる相変化の逐次的挙動を明瞭に捉えることができました。

・ガス環境下における材料強度学的その場観察・計測実験

高橋 可昌(関西大学)

材料の変形・破壊現象を解明するうえで、電子顕微鏡を用いたその場観察実験が果たしてきた役割は大きい。近年においては、さらに環境制御や力学計測を組み合わせ、より多面的な解析を目指す研究が活発になっている。本講演では、発表者が取り組んできた強度問題のうち、「金属の水素脆性」の微視的側面を理解するべく行ったユニークな複合実験(超高圧TEM×ガス環境制御×その場観察・計測)を紹介するとともに、いくつかの関連実験についても触れる。合わせて、その場観察実験の展望を材料強度学の立場から描いてみたい。

・深層学習支援HVEM-QMS-GCガス反応オペランド解析システムの紹介             

武藤 俊介(名古屋大学)

我々はこれまで反応科学超高圧電子顕微鏡にガスクロマトグラフ質量分析計を搭載し、金属微粒子触媒による自動車排気ガス浄化過程のオペランド計測を進めてきた。さらにTEM観察によるミクロ構造とマクロ計測法による平均物性との直接比較を可能とすることを目標に、大量の画像データから統計的な構造パラメータを算出するための機械学習のツールを活用するプロトタイプを開発したので紹介する。

・加熱その場TEM法を用いた固相エピタキシャル成長過程の解析

手面 学(キオクシア)

固相結晶化(SPC)を経て形成された結晶性薄膜は、粒内の欠陥や組成のばらつきといった不均一性によって電気特性が変化する。従来の膜全体の結晶化速度に基づく評価では、不均一性の起源であるナノスケールでの“局所的”な結晶成長を議論できなかった。本研究では、単結晶化が経験的に難しいとされるSi-SPCをモチーフとして、その場TEM法を適用し、薄膜内のアモルファスSi/微結晶Si界面での“局所的”な固相エピタキシャル(SPE)成長を解析した。その結果、連続的なSPEまたは不連続的なSPE(新たに同定された成長モード)を介して結晶が成長することがわかった。さらに、この不連続なSPEを介して粒内欠陥が形成されることを実証した。


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